ある日突然、使っているドライヤーの中が赤く光っていたら…驚きと同時に「これって大丈夫?火事にならない?」と不安になりますよね。その現象、場合によっては安全な正常動作のこともありますが、実はドライヤーが発する危険なSOSサインかもしれません。放置すると、本体の故障だけでなく、発火事故につながる恐れも。この記事では、美容家電の専門家が「ドライヤーが赤くなる」原因を、ホコリ詰まりや寿命、メーカー別のサインの違いまで徹底的に解明します。さらに、今すぐできる正しい対処法と、火災を防ぐための安全な使い方、髪を熱ダメージから守るテクニックまで、あなたの不安を安心に変えるための知識を網羅的にご紹介します。
- ドライヤーが赤くなる5つの原因と危険度の見分け方
- ホコリ詰まりが引き起こす異常加熱と発火のリスク
- 火災を防ぐための正しい掃除方法と電源コードの扱い方
- 修理か買い替えか、ドライヤーの寿命を見極める基準
ドライヤーが赤くなるのは危険?考えられる5つの原因
- まず確認!ドライヤー内部が赤く光る仕組み
- 【要注意】ホコリ詰まりによる異常な加熱と発火リスク
- 焦げ臭い・火花は寿命のサイン?モーターやコードの劣化
- 使い方に問題も?吸込口・吹出口の閉塞
- メーカー別サインの違い(パナソニック・ダイソン等)
まず確認!ドライヤー内部が赤く光る仕組み
ドライヤーの内部が赤く光ると、すぐに故障や火事を心配してしまいますが、まずはその仕組みを理解しましょう。ドライヤーは、本体後方の吸込口から空気を吸い込み、内部のファンで風を起こし、「ヒーター(電熱線)」でその風を温めています。このヒーターはニクロム線などの金属でできており、電気を流すことで高熱を発生させます。実はこの時、ヒーター自体が赤熱して赤く光るのは、トースターや電気ストーブと同じで、ごく自然な物理現象なのです。
実際に、日立などの大手メーカー公式サイトでも「風の通り道が均一ではないため、ヒーター内部が部分的に赤く見える場合がありますが、問題ありません」と説明されています。つまり、ドライヤーの心臓部であるヒーターが、設計通りにきちんと仕事をしている証拠とも言えます。ただし、重要なのはその「光り方」です。ぼんやりと部分的に赤く見える程度であれば正常範囲内ですが、

【要注意】ホコリ詰まりによる異常な加熱と発火リスク
ドライヤーが異常に赤くなる最も一般的で、そして最も危険な原因が「ホコリ詰まり」です。ドライヤーは構造上、室内の空気を大量に吸い込むため、空気中のホコリや髪の毛、ヘアスプレーの粒子などを一緒に吸い込んでしまいます。これらが吸込口のフィルターや内部に蓄積すると、空気の通り道が塞がれてしまいます。
空気の流れが滞ると、いくつかの危険な連鎖反応が起こります。まず、ファンが十分な空気を送り込めないため、ヒーターを適切に冷却できなくなります。行き場を失った熱は内部にこもり、ヒーターを異常な高温状態にしてしまうのです。これが、内部が全体的に、そして強く赤く光る原因です。さらに危険なのは、この高熱がフィルターに溜まったホコリ自体に引火し、「焦げ臭い」においを発生させ、最悪の場合、本体の溶解や発火事故につながることです。製品評価技術基盤機構(NITE)の報告でも、吸い込まれた髪の毛がファンに絡みつき、ヒーターが異常過熱して本体が溶けたという事例が挙げられています。ドライヤーの掃除は、性能維持のためだけでなく、火事を防ぐための重要な安全対策なのです。
ホコリ詰まりの危険な連鎖
- 吸込口にホコリや髪の毛が溜まる
- 空気の通り道が塞がれ、風量が低下する
- ヒーターを冷却できず、内部温度が異常上昇する
- ヒーターが真っ赤に光り、溜まったホコリが燃えて焦げ臭いにおいが発生する
- 本体の溶解や、最悪の場合は発火に至る
焦げ臭い・火花は寿命のサイン?モーターやコードの劣化
定期的に掃除をしていてもドライヤーが赤くなったり、焦げ臭いにおいがしたりする場合は、部品の「経年劣化」、つまり寿命が近づいているサインかもしれません。ドライヤーの平均的な寿命は、使用頻度にもよりますが一般的に3~4年、総使用時間で130~140時間ほどと言われています。特に消耗が激しいのが、ファンを回転させる「モーター」です。
モーターが劣化してくると、正常に回転しなくなり風量が落ちます。その結果、ホコリ詰まりと同じようにヒーターが過熱して赤くなることがあります。また、モーター自体が異常発熱し、部品が焼けて焦げ臭いにおいを発生させることも。「カラカラ」「キーキー」といった異音がするのも、モーター異常の典型的な症状です。もう一つの重大な劣化箇所が「電源コード」。特にコードの根元は、保管時に本体に巻きつけることで負荷がかかりやすく、内部の銅線が少しずつ切れていく「断線」状態になりがちです。断線箇所は電気が流れる際の抵抗が大きくなり、異常発熱してコードの被覆を溶かしたり、ショートして火花を散らしたりする原因となり、大変危険です。消費者庁や国民生活センターも、このコードの取り扱いについて繰り返し注意喚起を行っています。
ドライヤーの危険サインと緊急度チェックリスト
症状 | 考えられる原因 | 危険度 | 推奨される対処法 |
---|---|---|---|
内部が部分的に赤く見える | 正常な動作 or 軽度のホコリ詰まり | ★☆☆ | まずは吸込口の掃除を試す |
内部が全体的に真っ赤になる | 重度のホコリ詰まり or 内部異常 | ★★★ | 即時使用中止、買い替えを検討 |
焦げ臭いにおいがする | ホコリの燃焼 or モーター劣化 | ★★★ | 即時使用中止、点検・買い替え |
電源コードや付け根が異常に熱い | コード内部の断線 | ★★★ | 即時使用中止、絶対に再使用しない |
火花が見える | コードの断線 or 内部ショート | ★★★ | 即時使用中止、コンセントから抜く |
異音がする(カラカラ、キーキー) | モーターの寿命 or 内部に異物混入 | ★★☆ | 使用中止、点検・買い替えを検討 |
使い方に問題も?吸込口・吹出口の閉塞
ドライヤー本体に問題がなくても、日々の「使い方」が原因で内部が赤くなることがあります。それは、意図せず吸込口や吹出口を塞いでしまう行為です。例えば、ドライヤーを持っている手のひらで吸込口を覆ってしまったり、髪を乾かしている最中にタオルや衣類が吸込口に張り付いてしまったりするケースです。
吸込口が塞がれると、ホコリが詰まったのと同じ状態になります。つまり、空気の供給が絶たれて内部でヒーターだけが加熱を続け、急激な温度上昇を引き起こします。同様に、吹出口を壁や床にぴったりと押し当てて使ったり、クッションや布団の上で温風を出したまま放置したりするのも非常に危険です。温風の逃げ場がなくなり、熱が逆流して内部が過熱状態になります。特に最近のドライヤーはデザイン性が高く、吸込口がハンドルの下部にあるなど、従来とは異なる場所に配置されているモデルも増えています。ご自身のドライヤーの空気の通り道がどこにあるのかを一度確認し、無意識に塞いでいないか注意するだけで、多くのトラブルは防げます。髪を乾かす際は、吸込口から髪や障害物まで最低でも10cm以上は離すことを心がけましょう。



メーカー別サインの違い(パナソニック・ダイソン等)
ドライヤーが発する「赤くなる」というサインは、基本的な原因は共通していますが、メーカーやモデルによって少しずつ意味合いや警告の仕方が異なります。ご自身の持っているドライヤーの特性を知っておくと、いざという時に正しく判断できます。
例えば、パナソニックの一部のモデルでは、取扱説明書に「温風で使用中、吹出口に火花が見える場合は保護装置(サーモスイッチ)の働きによるもので、危険ではありません」という記載があります。これはホコリ詰まりなどで内部が高温になった際に、安全のために一時的にヒーターへの通電を止めるスイッチが作動する際の光です。ただし、これはあくまで「掃除をしてください」というサインであり、「内部が真っ赤になり煙が出る」場合は即時使用中止が求められる重大な異常です。一方、ダイソンのドライヤーは、物理的なサインよりもLEDライトで状態を知らせるのが特徴です。例えば、白いLEDが3つ点滅する場合は「フィルターの掃除が必要」というサイン、赤いLEDが3つ点滅する場合は「故障の可能性」を示し、お客様相談室への連絡が推奨されています。このように、新しいモデルほど、危険な状態になる前に電子的に警告してくれる機能が備わっています。
主要メーカーの警告サイン例
- パナソニック: 吹出口の火花は保護装置作動の可能性。ただし「真っ赤+煙」は即使用中止のサイン。
- ダイソン: 赤いLEDの点滅は故障のサイン。お客様相談室への連絡が必要。
- シャープ: 取扱説明書で「内部が真っ赤になったり、煙が出る」場合は、ただちに使用を中止し、点検・修理を依頼するよう警告。
お使いの製品の取扱説明書を一度確認し、異常時のサインについて把握しておくことを強くお勧めします。
ドライヤーが赤くなるときの正しい対処法と安全な使い方
- すぐに実践できる応急処置と掃除方法
- 修理か買い替えか?ドライヤーの寿命を見極める基準
- 火災を防ぐ!電源コードの安全な保管と取り扱い
- 熱ダメージから髪を守る正しいドライヤーテクニック
すぐに実践できる応急処置と掃除方法
もし使用中にドライヤーが赤くなったり、焦げ臭いにおいがしたりしたら、パニックにならずに次の手順で応急処置を行ってください。安全を最優先に行動することが重要です。
【応急処置と掃除の手順】
- ただちに使用を中止し、電源スイッチを切る
異常を感じたら、まずは運転を停止します。 - 電源プラグをコンセントから抜く
必ずプラグ本体を持って、まっすぐ引き抜いてください。コードを引っ張るのは断線の原因になり危険です。 - 本体が完全に冷めるまで待つ
ヒーターやモーターは高温になっています。やけどを防ぐため、少なくとも30分以上は放置して熱を冷ましましょう。 - 吸込口と吹出口のホコリを取り除く
本体が冷めたら、掃除をします。使い古しの歯ブラシや綿棒を使って、フィルターの網目に詰まったホコリや髪の毛を優しくかき出すように取り除きます。内部に入り込んだホコリは、掃除機のノズルで吸い出すのも効果的です。フィルターが取り外せるタイプの場合は、取扱説明書に従って外し、水洗いできるものは洗浄後、完全に乾燥させてから元に戻してください。水気が残っていると故障や感電の原因になります。
この掃除を行った後、再度運転してみて異常な赤熱や異臭が解消されれば、原因はホコリ詰まりだった可能性が高いです。今後は、月に1回程度を目安に定期的な掃除を心がけましょう。
修理か買い替えか?ドライヤーの寿命を見極める基準
丁寧に掃除をしても症状が改善しない場合、残念ながらドライヤーが寿命を迎えている可能性が高いです。その際、「修理」と「買い替え」のどちらを選ぶべきか、判断基準を知っておきましょう。
まず大前提として、ドライヤーの平均寿命は3~4年です。この年数を超えて使用している場合、モーターや内部配線など、掃除では解決できない部品が劣化していると考えられます。特に、前のセクションで紹介した「危険サインと緊急度チェックリスト」で危険度が「★★★」に該当する症状(全体が真っ赤になる、焦げ臭い、コードが熱い、火花が出るなど)が見られる場合は、火災のリスクが非常に高いため、修理を試みずに直ちに買い替えを検討してください。
メーカーの保証期間はほとんどの場合、購入から1年間です。保証期間を過ぎたドライヤーの修理は、数千円から一万円以上の費用がかかることもあり、新品を購入する費用と大差ない、あるいは高くなるケースも少なくありません。安全性とコストパフォーマンスを考慮すると、3年以上使用したドライヤーに重大な異常が見られた場合は、新しい製品に買い替えるのが最も賢明な選択と言えるでしょう。



火災を防ぐ!電源コードの安全な保管と取り扱い
ドライヤーによる火災事故の原因として、ホコリ詰まりと並んで非常に多いのが「電源コードの不適切な取り扱い」です。国民生活センターやNITE(製品評価技術基盤機構)の調査では、コードの断線による発火事故が多数報告されており、その多くは日々の習慣に起因しています。
最もやってはいけないのが、「電源コードを本体にきつく巻きつけて保管する」ことです。これを繰り返すと、本体との接続部分であるコードの根元に常に強い力がかかり、内部の細い電線が少しずつ切れてしまいます。これが半断線(断線しかかった状態)となり、使用時にその部分が異常発熱し、ショートして火花が出たり、コードの被覆が溶けて発火したりするのです。実際に、70代女性がヘアドライヤーを使用していてコードから火が出て火傷を負った事例も報告されています。
電源コードの安全な取り扱い 3つのルール
- 本体に巻きつけない: 保管する際は、コードをゆるく束ねるか、フックなどに掛けて根元に負担がかからないようにする。
- コードを引っ張らない: コンセントから抜くときは、必ずプラグ本体を持つ。
- ねじれを解消する: 使用中にコードがねじれた場合は、一度プラグを抜き、ねじれを直してから使用を再開する。
これらの習慣を守るだけで、火災のリスクを大幅に減らすことができます。毎日のことだからこそ、安全な取り扱いを徹底しましょう。
熱ダメージから髪を守る正しいドライヤーテクニック
安全なドライヤーの使い方は、火災予防だけでなく、美しい髪を育む上でも非常に重要です。異常な高熱は、髪の主成分であるタンパク質を硬化させる「タンパク変性」を引き起こし、髪をごわつかせ、パサつきや枝毛の原因となります。安全な状態のドライヤーで、正しいテクニックを実践し、髪への熱ダメージを最小限に抑えましょう。
まず、ドライヤーをかける前に、タオルドライで髪の水分をしっかりと拭き取ります。ゴシゴシこするのではなく、タオルで髪を挟み込み、優しくポンポンと叩くように水分を吸収させましょう。これにより、ドライヤーを当てる時間を大幅に短縮できます。次に、ドライヤーの熱から髪を守る「ヒートプロテクト」効果のある洗い流さないトリートメント(オイルやミルクなど)を毛先中心になじませます。これは髪の表面に保護膜を作り、熱によるダメージを軽減してくれる大切なステップです。
乾かす際は、髪から15~20cmほど離し、常にドライヤーを小刻みに振りながら風を当ててください。同じ場所に熱が集中するのを防ぎます。乾きにくい根元から先に乾かし、髪全体が8割ほど乾いたら、温風から冷風に切り替えて仕上げます。冷風を当てることで、開いたキューティクルが引き締まり、髪のツヤが増してスタイルも長持ちします。この一連の流れが、髪を熱ダメージから守るための基本テクニックです。
総括:ドライヤーが赤くなるサインを見逃さず、安全なヘアケアを
- ドライヤー内部が赤くなるのは、ヒーターが作動している正常な現象である場合がある。
- ただし、内部全体が真っ赤になったり、焦げ臭いにおいがしたりするのは危険な異常信号である。
- 異常な赤熱の最も一般的な原因は、吸込口へのホコリや髪の毛の詰まりである。
- ホコリ詰まりは空気の流れを妨げ、ヒーターの異常過熱を引き起こし、発火のリスクを高める。
- モーターの経年劣化(寿命)も、風量低下や異常発熱、焦げ臭いにおいの原因となる。
- ドライヤーの平均寿命は一般的に3~4年、または使用時間130~140時間が目安である。
- 電源コードの根元が熱い、火花が散るなどの症状は、内部断線の可能性が高く非常に危険である。
- 使用中に吸込口や吹出口を手やタオルで塞ぐと、内部が急激に過熱するため注意が必要である。
- 異常を感じたら、まず使用を中止し、電源プラグを抜いて本体を完全に冷ますことが最優先である。
- 定期的な掃除が不可欠であり、月に一度は歯ブラシや掃除機で吸込口のホコリを除去すべきである。
- 掃除をしても改善しない場合や、使用年数が3年を超えている場合は、安全のために買い替えを推奨する。
- 電源コードを本体にきつく巻きつける保管方法は、断線の原因となるため絶対に避けるべきである。
- コードはゆるく束ねるか、フックに掛けて保管するのが安全である。
- 髪を熱ダメージから守るには、ドライヤーを15cm以上離し、常に動かしながら使うことが重要である。
- ドライヤー前のタオルドライとヒートプロテクト剤の使用は、熱ダメージ軽減に極めて効果的である。