毎日使うドライヤーのコードがねじれて、扱いにくさを感じていませんか?実はその「ねじれ」、放置すると発火や火傷につながる重大な事故の危険信号かもしれません。この記事では、美容家電の専門家が、ドライヤーのコードがねじれる根本的な原因と、その内部で進行する劣化の仕組みを科学的根拠に基づいて徹底解説します。さらに、今日から実践できる正しい保管方法、ねじれを安全に直すテクニック、そしてコードがねじれにくいドライヤーの選び方まで、あなたのドライヤーを安全に長く使うための知識を網羅的にご紹介。この記事を読めば、コードのねじれに関する不安を解消し、大切な髪と暮らしを守るための具体的な行動が分かります。
- ドライヤーのコードのねじれが火災や火傷を引き起こす危険性
- コードを本体に巻きつける収納が最も危険な理由
- ねじれを防ぐ正しい保管方法と安全な直し方
- コードがねじれにくいドライヤー選びの3つのポイント
④ 見出し+本文
ドライヤーのコードのねじれが招く危険性とその原因
- ねじれから断線へ:コード内部で起こる劣化の仕組み
- 発火・火花・火傷:実際に起きた事故事例を徹底解説
- なぜ危険?コードを本体に巻きつけるNG収納のすべて
- ドライヤーが送る危険信号:使用中止の判断基準
ねじれから断線へ:コード内部で起こる劣化の仕組み
ドライヤーのコードがねじれている状態を、単なる「扱いにくさ」の問題だと思っていませんか?実は、そのねじれはコード内部で深刻な劣化が進行しているサインかもしれません。電源コードは、外側の丈夫なゴムやビニールの被覆と、その中にある電気を通すための無数の細い銅線(素線)から構成されています。ドライヤーを使うたびにコードをねじったり、強く折り曲げたりする行為は、この内部の細い素線に繰り返しストレスをかけることになります。
その結果、素線が1本、また1本と金属疲労によって切れていく「内部断線(半断線)」という状態に陥ります。東京都が実施した商品テストでは、外観上ねじれが見られるドライヤーのコードをX線で解析したところ、約7割で内部の素線が切れていることが確認されました。驚くべきことに、外見はほとんど異常がないにもかかわらず、内部の素線が完全に切断されていたケースもあったのです。これは、コードの危険性は見た目だけでは判断できないという、非常に重要な事実を示しています。
半断線状態になると、残された数少ない素線にすべての電流が集中して流れるため、その部分が異常に発熱しやすくなります。この発熱が被覆を溶かし、最終的にはショート(短絡)を引き起こし、火花や発火に至るのです。これが、コードのねじれが火災につながるメカニズムです。
コードのねじれは、見た目の問題だけでなく、内部で素線が切れる「内部断線」を引き起こす危険な兆候です。外観に異常がなくても、内部で劣化が進行している可能性があるため、日頃からの丁寧な取り扱いが不可欠です。
発火・火花・火傷:実際に起きた事故事例を徹底解説
ドライヤーのコードのねじれが引き起こす危険は、決して理論上の話ではありません。実際に、製品評価技術基盤機構(NITE)や国民生活センター、消防庁には、コードの劣化が原因とみられる痛ましい事故が数多く報告されています。
例えば、ある家庭では「使用中のドライヤーのコード付け根から火花が出て、胸に火傷を負った」という事故が発生しました。調査の結果、コードがねじれた状態で使用を続けたために内部で断線が起こり、ショートして火花が飛び散ったものと断定されています。また、東京消防庁管内では、ヘアドライヤーが原因の火災が年間に複数件発生しており、その多くが電源コードのショートや半断線によるものだと報告されています。

これらの事故事例を分析すると、一つの共通したパターンが見えてきます。それは、「不適切な保管・使用(ねじれ・巻きつけ)」→「繰り返し加わる物理的ストレス」→「内部素線の断線(半断線)」→「異常発熱・被覆の溶解」→「ショートによる発火・火花」という、事故に至る予測可能な連鎖です。この流れを理解することが、事故を未然に防ぐための第一歩となります。単に「危ないからやめよう」ではなく、「なぜ、どのように危険なのか」を正しく知ることで、安全な使い方を徹底する意識が高まるのです。
なぜ危険?コードを本体に巻きつけるNG収納のすべて
ドライヤーの収納方法として、多くの人が無意識に行っている「コードを本体にぐるぐる巻きつける」行為。実はこれが、コードを最も傷つけ、事故を引き起こす最大の原因です。パナソニックやシャープといった大手メーカー、日本電機工業会(JEMA)、そして国民生活センターなど、ほぼすべての公的機関やメーカーが、この収納方法に対して厳しく警鐘を鳴らしています。
なぜ本体への巻きつけが危険なのでしょうか。その理由は、コードの最も弱い部分である「本体との接続部分(コードブッシュ)」に、極度のストレスが集中してかかるためです。コードをきつく巻きつけると、この根元部分が常に鋭角に折り曲げられた状態になり、内部の素線が断線しやすくなります。国民生活センターの調査では、約6割の人が「コードを本体に巻きつけてはいけない」という事実を知らなかったと回答しており、危険性に関する認識が十分に浸透していない実態が浮き彫りになりました。
さらに興味深いのは、多くの人が「使用後はコンセントを抜く」という安全対策は実践している一方で、その後に危険な「本体への巻きつけ」を行っているという点です。これは、トラッキング火災のような電気的な危険は認識していても、コードへの物理的な負荷という機械的な危険については知識が不足していることを示唆しています。この「安全意識のギャップ」を埋めることが、事故を防ぐ上で非常に重要です。コードを本体に巻きつけるのは、安全のために抜いたプラグのすぐ隣で、新たな火災の種を育てているようなものなのです。
コードをドライヤー本体に巻きつけると、根元部分に負荷が集中し、内部断線の最大の原因となります。便利に見えても、発火のリスクを著しく高めるため、絶対にやめましょう。
ドライヤーが送る危険信号:使用中止の判断基準
重大な事故に至る前、ドライヤーは多くの場合、何らかの危険信号を発しています。これらのサインを見逃さず、直ちに使用を中止することが、あなた自身と家族の安全を守るために不可欠です。もしお使いのドライヤーに以下の症状が一つでも見られたら、それはコード内部で深刻な劣化が進んでいる証拠かもしれません。絶対に「まだ使えるから」と使い続けず、すぐにコンセントからプラグを抜いてください。
特に注意すべきは、「コードを動かすと電源が入ったり切れたりする」という症状です。これは、内部の素線が切れかかっており、接触したり離れたりしている典型的なサイン。この状態で使用を続けるのは、いつショートして火花が散ってもおかしくない、極めて危険な状態です。また、コードの特定の部分だけが異常に熱くなる場合も、半断線によって過剰な電流が流れ、抵抗で熱が発生している可能性が高いです。
これらのサインは、ドライヤーからの最後の警告です。以下のチェックリストを参考に、ご自身のドライヤーの状態を今一度確認してみてください。
危険な兆候(サイン) | 潜むリスク(内部で起きていること) | 推奨される対処法 |
---|---|---|
コードを動かすと電源が入ったり切れたりする | 内部の素線がほぼ断線しており、接触不良を起こしている状態(半断線)。ショート寸前の極めて危険な兆候。 | 直ちに使用を中止し、コンセントからプラグを抜く。 |
電源コードの特定の部分が異常に熱くなる | 半断線により、残った素線に過電流が集中して異常発熱している。被覆が溶けてショートする危険性が高い。 | 直ちに使用を中止し、コンセントからプラグを抜く。 |
コードの根元や途中に、被覆の破れや焦げ跡がある | 内部で発生した熱により被覆が損傷している。感電やショートの直接的な原因となる。 | 直ちに使用を中止し、コンセントからプラグを抜く。 |
使用中に焦げ臭いにおいがする | 内部のホコリの過熱、またはコードの異常発熱が原因の可能性がある。火災の前兆。 | 直ちに使用を中止し、コンセントからプラグを抜く。 |
コードのねじれや折れ曲がりのクセが戻らない | 長期間にわたり物理的なストレスがかかり続けている証拠。内部断線が進行している可能性が高い。 | 使用を中止し、点検または買い替えを検討する。 |
ドライヤーのコードのねじれを防ぐ完全ガイド
- 安全の基本:毎日の正しいドライヤー保管テクニック
- ねじれを安全に直す方法と絶対にしてはいけないこと
- ねじれにくいドライヤーの選び方:注目すべき3つの特徴
- 修理か買い替えか?費用と安全から考える最適な選択
- 安全の証「PSEマーク」とは?電気用品安全法の基本
安全の基本:毎日の正しいドライヤー保管テクニック
ドライヤーのコードの劣化を防ぎ、安全に長く使い続けるための最も効果的な方法は、日々の正しい保管を習慣にすることです。危険な「本体への巻きつけ」をやめ、コードの根元に負担をかけない収納方法を実践しましょう。幸いなことに、少しの工夫や便利なアイテムの活用で、安全かつスマートな収納は簡単に実現できます。
最もシンプルで推奨される方法は、「フックに掛ける」収納です。洗面所の壁や棚の側面などにフックを取り付け、ドライヤーのフック用リングを掛けるだけ。これにより、コードは自然に垂れ下がり、根元に全くストレスがかかりません。ドライヤーにリングがない場合は、ドライヤーホルダーやラックを活用するのも良いでしょう。マグネット式で洗濯機に付けられるものや、洗面台の扉に引っ掛けるタイプなど、様々な製品が市販されています。



引き出しなどにしまう場合は、コードを大きな輪になるようにゆるく束ね、マジックテープ式のコードバンドやコードクリップで軽く留めるのがおすすめです。この時も、根元から数センチは曲げずに、まっすぐな状態を保つのがポイントです。これらの正しい保管方法を徹底するだけで、コードの寿命は格段に延び、事故のリスクを大幅に減らすことができます。
ねじれを安全に直す方法と絶対にしてはいけないこと
すでにコードがねじれてしまっている場合、どうすれば安全に直せるのでしょうか。無理に逆方向にねじったり、強く引っ張ったりするのは、かえって内部の素線を傷つける原因となり危険です。安全にねじれを解消するための、いくつかの正しい方法をご紹介します。
最も簡単で安全な方法は、物理の法則を利用するものです。まず、必ずコンセントからプラグを抜いた状態で、ドライヤー本体を持ち、コードを床に向かって自然に垂らします。すると、コード内部に蓄積されたねじれの力が解放され、コードが自然に回転してまっすぐに戻ろうとします。多くの場合、これだけで軽度のねじれは解消されます。
それでも頑固な折れグセが残っている場合は、少し高度な方法として、温めてクセをリセットする方法があります。空のガラス瓶などにコードを隙間なく巻き付け、テープで固定します。その後、ドライヤーの温風を優しく当てるか、人肌より少し熱い程度のお湯をかけたタオルでコード全体を温めます。熱で被覆が柔らかくなった状態でしばらく放置し、完全に冷めてから外すと、クセが和らぎます。
この方法を試す際は、熱しすぎに十分注意してください。被覆や内部の導線を傷める恐れがあります。また、作業は必ずプラグを抜いて行ってください。
一方で、被覆が破れていたり、内部の導線が見えていたりするような明らかな損傷がある場合、個人での修理は絶対にやめてください。はんだ付けや熱収縮チューブを使った修理は専門的な知識と技術を要し、不完全な修理は絶縁不良による火災や感電の新たな原因となります。その場合は、次の項目を参考に、メーカー修理か買い替えを検討してください。
ねじれにくいドライヤーの選び方:注目すべき3つの特徴
日々の正しい使い方や保管が最も重要であることは言うまでもありませんが、製品選びの段階で「ねじれにくい」工夫が施されたドライヤーを選ぶことも、有効な安全対策の一つです。メーカー側もコードのねじれが故障や事故の大きな原因であることを認識しており、その問題を解決するための技術開発を進めています。これからドライヤーを買い替えるなら、以下の3つの特徴に注目してみてください。
- ねじれにくいゴムコード採用モデル
- 360°回転式コード搭載モデル
- コード収納機能付きモデル
一つ目は、テスコム社の一部のモデルなどで採用されている「ねじれにくいゴムコード」です。一般的な塩化ビニル製のコードに比べ、柔軟性が高くしなやかなゴム素材を使用することで、ねじれや絡まりそのものが起こりにくくなっています。二つ目は、パナソニックの「くるくるドライヤー」や、美容室で使われるNobbyの業務用モデルなどに多い「360°回転式コード」です。本体との接続部分が360度自由に回転するため、ドライヤーをどんな角度で使ってもコードにねじれが蓄積されません。スタイリング中にドライヤーを持ち替えることが多い方には特に便利な機能です。
そして三つ目が、一部の製品に見られる「コード巻き取り(収納)機能」です。掃除機のように、ボタン一つでコードが本体内部に自動で巻き取られるタイプです。これにより、保管時のコードの扱いに関する悩みが根本から解消されます。これらの機能は、ユーザーの「うっかり」や「面倒」を、製品の設計思想でカバーしようとするアプローチです。毎日の安全を確保するための追加投資として、こうした機能を持つドライヤーを選ぶのは非常に賢明な選択と言えるでしょう。
修理か買い替えか?費用と安全から考える最適な選択
ドライヤーのコードに異常が見つかった場合、多くの人が「修理すべきか、それとも新しいものを買うべきか」で悩むことでしょう。この判断は、お使いのドライヤーの価格、使用年数、そして何よりも安全性を総合的に考慮して決めるべきです。
まず、メーカーや家電量販店にコードの修理を依頼した場合の費用を見てみましょう。機種や損傷の程度にもよりますが、一般的に修理費用は5,500円から16,000円前後が目安とされています。これに加えて、修理には数週間程度の時間がかかることが多く、その間ドライヤーが使えないという不便さも考慮しなければなりません。保証期間内であれば無償または安価で修理できる可能性もありますが、保証が切れている場合は、新品のドライヤーが購入できてしまうほどの費用がかかることも珍しくありません。



ここで最も重視すべきは、安全性です。一度断線などのトラブルを起こしたコードは、たとえ修理したとしても、再び同じような問題が発生するリスクがゼロとは言えません。一方で、新しいドライヤーに買い替えれば、最新の安全基準を満たした製品を手に入れることができます。前述したような「ねじれにくいコード」を採用したモデルを選べば、将来的なリスクをさらに低減できます。ダイソンのような高価格帯のドライヤーであれば修理を選択する価値はありますが、一般的なドライヤーであれば、安全とコストパフォーマンスの両面から、思い切って買い替える方が賢明な判断と言えるでしょう。
安全の証「PSEマーク」とは?電気用品安全法の基本
ドライヤーを安全に選び、使用するために、ぜひ知っておいていただきたいのが「PSEマーク」の存在です。これは、日本の法律である「電気用品安全法」に基づいて、国が定めた安全基準に適合していることを示す、いわば「安全の証」です。
電気用品安全法は、コンセントに接続して使用するほとんどの家電製品を対象としており、火災や感電などの危険を防止するために、製品の構造や材質、性能について厳しい基準を設けています。例えば、ドライヤーの場合、「使用中に人が触れる部分の表面温度が規定値(取っ手なら60℃)を超えないこと」や、「表示されている消費電力と実際の消費電力に大きな差がないこと」などが細かく定められています。メーカーは、これらの基準をすべてクリアしていることを確認した上で、製品にPSEマークを表示して販売する義務があります。
現在、日本国内で正規に販売されているドライヤーには、必ずこのPSEマークが表示されています。製品本体のラベルや、電源プラグの近くなどを確認してみてください。もし、フリマアプリや海外のサイトなどで、このマークがない製品を見かけた場合は、日本の安全基準を満たしていない違法な製品である可能性が非常に高いため、絶対に購入・使用しないでください。
PSEマークに加えて、「Sマーク」という表示がある製品もあります。これは法律で義務付けられたものではありませんが、第三者認証機関がより客観的な立場で製品試験や工場の品質管理体制を審査し、安全性を確認したことを示す任意のマークです。より高い安全性を求める際の参考になります。
総括:ドライヤーのコードのねじれは事故のサイン、正しい知識で火災を防ぐ
この記事のまとめです。
- ドライヤーのコードのねじれは、内部で素線が切れる「内部断線」の兆候である。
- 内部断線は、異常発熱やショートを引き起こし、火花、発火、火傷の原因となる。
- 実際に、コードの劣化が原因の火災や人身事故が多数報告されている。
- 事故は「不適切な扱い→断線→発火」という予測可能な連鎖で発生する。
- コードをドライヤー本体にきつく巻きつける収納は、最も危険な行為である。
- 本体への巻きつけは、コードの根元に極度の負荷をかけ、断線を誘発する。
- 国民生活センターの調査では、約6割の人が本体への巻きつけの危険性を知らなかった。
- 「コードを動かすと電源が切れる」「コードが異常に熱い」は使用中止の危険信号である。
- 焦げ臭いにおいや被覆の破損も、火災につながる重大なサインである。
- 正しい保管方法は、フックに掛けるか、ゆるく束ねてコードクリップで留めることである。
- コードの根元に負担をかけない「ノーストレス」な収納が基本である。
- ねじれを直す際は、コードを自然に垂らして回転させるのが最も安全である。
- 個人によるコードの切断やはんだ付けなどの修理は、感電や火災のリスクがあり大変危険である。
- ドライヤー選びでは「ねじれにくいゴムコード」や「360°回転式コード」が有効な対策となる。
- コードの修理費用は高額になることが多く、安全性とコストを考慮すると買い替えが賢明な場合が多い。
- 「PSEマーク」は、日本の電気用品安全法の基準を満たした安全な製品の証である。